所得税が課税されない、いわゆる「年収103万円の壁」の見直しについては、昨年から大きな注目を浴びてきました。
「令和7年度税制改正の大綱」(令和6年12月27日閣議決定)では、「基礎控除」と「給与所得控除」を見直し、「103万円」を「123万円」に引き上げることが盛り込まれました(基礎控除:現行48万円→58万円/給与所得控除の最低保障額:現行55万円→65万円)。
しかし、その後、衆議院本会議で修正案が出され、採択されました。修正案では、所得税の課税最低限が、年収によって最大160万円(最大で基礎控除が95万円に、給与所得控除の最低保障額が65万円)に引き上げられることとなりました。
令和7年分以後の所得税から、所得税の基礎控除と給与所得控除(最低保障額)がそれぞれ引き上げられるわけですが、課税最低限の「160万円」の恩恵を受けられるのは年収200万円以下の人です。年収が200万円を超えると、4段階で基礎控除の額が変わります。
〇基礎控除95万円(58万円に37万円上乗せ)+給与所得控除65万円=160万円
〇基礎控除88万円(58万円に30万円上乗せ※)+給与所得控除(年収により異なる)
〇基礎控除68万円(58万円に10万円上乗せ※)+給与所得控除(年収により異なる)
〇基礎控除63万円(58万円に5万円上乗せ※)+給与所得控除(年収により異なる)
〇基礎控除58万円(上乗せなし)+給与所得控除(年収により異なる)
※令和7年分・8年分の時限的措置
なお、年収2,545万円超の人は、今改正の影響はありません。
今回の見直しにより、実際にどれぐらい所得税の減税効果が期待されているのでしょうか。それぞれのケースによって異なりますが、目安としては下記のとおりです。
■単身者の場合
年収 | 減税額 |
200万円 | 2.4万円 |
400万円 | 2万円 |
800万円 | 3万円 |
1,500万円 | 3.3万円 |
■夫婦共働き世帯の場合
年収 | 減税額 |
計400万円(それぞれ200万円) | 計4.7万円(それぞれ2.4万円) |
計800万円(それぞれ400万円) | 計4万円(それぞれ2万円) |
計800万円(600万円+200万円) | 計4.4万円(2万円+2.4万円) |
計2,000万円(それぞれ1,000万円) | 計4万円(それぞれ2万円) |
自由民主党・公明党「基礎控除の特例の創設について」(令和7年2月28日公表)を基に作成
今回の修正案は、非常に複雑なものとなっています。まずは、自社の従業員にどの程度の影響があるのかを確認しておきましょう。
また、「年収の壁」見直しについて、令和7年分は年末調整で対応することとされています。年末調整事務が煩雑になることも予測されますので、スムーズな手続きを行うために早めに準備を進めることが大切です。